メロウなvéloで行こう

おもに小径折りたたみ自転車で東北各地、ときに日本各地や海外を走る話

2014 ドイツ エアニマル・ライノで輪行する話

2014 ドイツ・フランスの旅

Day3 ファイヒンゲンまで輪行・・・エティスハイムまで 約23km

Düsseldorf -(train)- Vaihingen an der Enz - Ötisheim


 行程の前半、ドイツ南西部シュヴァルツヴァルトの旅が今日からはじまる。

 以前から訪ねたいと思っていたヘルマン・ヘッセゆかりの地(故郷の町カルプと少年時代を過ごしたマウルブロン修道院)に立ち寄ることも鑑み、自転車旅の出発点をシュトゥットガルト近くのプフォルツハイムに決めた(当日になってファイヒンゲンに変更)。

 デュッセルドルフからプフォルツハイムまではインターシティ(IC)で約3時間半。もっと早い特急(ICE)もあるのだがこれは自転車持ち込み不可(輪行袋に入れてもダメらしいが、ブロンプトンのようなフォールディング小径車なら可らしい。←未確認)。

 指定券は日本からネットで予約した。自転車の持ち込みも事前予約が必要でしかも台数に限りがある。しかも夏休み中の週末とあってなかなか取りづらく、人間の席は取れても自転車は満席ですと言われて列車を変更すること数回、ようやく確保できた。

 小径折畳車なんだから袋に入れて持ち込めばいいだろうという声もあろうが、客車の荷物スペースが果たしてどのくらいあるのかわからなかったし、なによりライノは折りたたみ車と言っても前輪を外さなくてはならないし畳んだ状態の取り回しも非常にたいへんなのである。折畳み作業の面倒さも考えた上でそれなら荷物車に預けたほうが安全かつ気楽と考えたのだった。


  デュッセルドルフ中央駅までは前の日に自走で行ってみてはいたが、今日は万全を期して宿の目の前のヴェアハーン駅からSバーンで中央駅へ。

 

 左) Sバーン車内はそのまま持ち込み可 右)中央駅からこのシュトゥットガルト行きに乗る(すでに5分遅れている)



 なかなか難解な指定券。「座席1名、自転車1台、座席が12号車、自転車用荷物車が5号車、座席No96、自転車ラックNo143」の意だが実際乗ってみるまで意味が解らない。(乗り換えプフォルツハイム行きの区間はキャンセルした)

運賃は1等車69€、自転車9€だった。荷物車と自分の席までの間に6両挟まっているということの大変さをこのあと知ることとなる。


 『5号車に自転車を積んだら荷物しょって12号車までプラットホームを歩いていけばいいんでしょ』と普通に考えていたが、そう簡単な話ではなかった。当駅始発ならばそれで楽勝なのだが、やって来たシュトゥットガルト行きはハンブルク始発だった。荷物車に係員でもいるのかと思ったが完全セルフサービス。停車時間は数分だ。自転車を担いで乗り込んでからあたふたと自分の番号を探してラックに固定して鍵をかけて、という作業に手間取るうちにあっという間に発車時刻になってしまった。これから下車して荷物を担いで客車6両分の距離を走っても間に合わない。自転車だけが出発してわたしはデュッセルドルフに取り残されるという事態が危惧された。よって発車してから車内の通路を歩いて自席にたどり着くという戦略に変更を余儀なくされた。荷物でパンパンのパニアバッグ2つとフロントバッグを担いで状態で走行中の列車の狭い通路を移動するというのだけでけっこうな苦行だが、さらに悪いことに、始発のハンブルクから、ひいきのチームのケルンでの試合に向かう大人数のサッカーファンの団体が乗り込んでおり、2等車の大半の車輛が通路まで人で埋まる超満席なのであった。しかもこいつらがすでに大量のビールを摂取してすっかり出来上がっており、声を限りに応援歌を高歌放吟し盛り上がりまくっている。その只中をでかい荷物しょって6両分移動するとはどんな罰ゲームだ。

「すいません、失礼、ごめんよ、ちょっと通してください」と知る限りのドイツすいませんフレーズをリピートしながらサッカーバカたちをかき分けて進む。意外なことにみんなわりと協力的で、嫌がらせされることもなくみんな素直に通してくれたのだが席にたどり着くまで15分ぐらいかかった。

 阿鼻叫喚の2等車とうって変わって1等車は平和と静寂が支配していた。近くの席にはサイクルジャージに身を包んだ熟年夫婦などもいる。列車に数時間乗車するのにあらかじめジャージにレーパン着用とはずいぶん気合が入っている。

その先ケルンに到着するとサッカーバカたちはどっと降りて、さらにプラットフォームでチャントを高吟して気勢を上げた挙句歌いながら会場に向かって流れて行った。やれやれ。


右)このラックに番号が振られていて指定されたとこに置く。  

左)1等車はコンパートメント


 ケルン以南は車内に平穏が戻り、車窓は田園風景と美しい街並みが続き、やがてライン川に沿って南下していく。ライン川沿いにも自転車道(Rheinradweg)が整備されており、車窓からも行き交うサイクリストを多く目にした。谷の両側の丘にはところどころ城が点在する。あれらの城を巡りながら川沿いに走るのもよさそうだ。

 最初の日の宿はマウルブロンに近い小さな町エティスハイムに取ってある。

当初は途中で列車を乗り継いでプフォルツハイムまで行った上でエティスハイムまで自走する予定だったが、車内で地図を吟味していたところ乗り継ぎ駅のファイヒンゲンから川沿いの自転車道でエティスハイムまで行けることを知り、乗り換えずにここで下車することにした。


 途中ハイデルベルクを過ぎたあたりから雨が降り始めており、少々気が重い。

ファイヒンゲンで降りたときもけっこう降っていたのでのっけから雨具着用の上で走り出す。


ファイヒンゲンまで乗ってきたICを見送る


 エンツ川沿いの自転車道に出るためにまずは駅から旧市街を目指す。幸い雨も止んできた。

 ファイヒンゲンはガイドブックにも出ていない無名の町だし通りすぎるつもりだった。ところがどっこい、着いてみれば美しい木組造りの家並みが保存された小さな宝石箱のような街だったのだ。いきなりドイツの本気を見せられた気がしたサプライズであった。



観光客も見当たらず、ローカルのまったりとした時間が流れる。






もっとゆっくり観光していきたかったがここからエティスハイムまで20㎞走らなければならない。先を急ぐ。


旧市街を出て自転車道へ。丘の上にはお城も


エンツ谷自転車道 Enztal Radwegシュヴァルツヴァルト北部のエンツ川源流からシュトゥットガルト北方のヴァルトハイムでネッカー川に注ぐまで川沿いを走る107kmのコース。今回走ったのは短い区間だったが、沿道にはさらにファイヒンゲンのような無名の美しい町がありそうな感じだったのでこちらを走るのもよい旅になるだろう。

ちなみにエンツ川はこの付近でぐねぐねと小腸のように蛇行しており、流れに沿ったルートを辿ると直線距離の3倍ぐらい走らなくてはならないのだが、それもまた悪くない。


川沿いに快走


ぶどう畑の中を行く



途中のミュールアッカーの村から川筋をはずれて農道をたどりエティスハイムを目指す。

通り過ぎた村々は通りの名前が「ヘルマンヘッセ通り」「ヘルダーリン通り」「ハイネ通り」「メーリケ通り」と独文学シリーズだった(ヘルダーリンもマウルブロン神学校で学んだ)。


途中の無名の村ロマースハイム Lomersheim。



 エティスハイムに到着。木組みの家並みが残る小さな町。



予約してあったHotel Krone は街の端っこにある静かなホテル。テントの中に雨風をしのぐレストランがある。



朝食付き50€  


まずは一杯。


明日はマウルブロン修道院からカルプへ


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