Day6 チャーヴィン-ソクチャン Tra Vinh - Soc Trang
前の日の話 ↓
いい宿は朝ごはんもうまい。
初めて汁なしブン(麺)を食べてみた。、絶妙な味わいのタレ、パクチーはじめ各種スパイス、刻みピーナッツの食感、どれも新しい世界がコンニチハだ。
さらにはベトナム風ビーフシチュー(ボーコー)もある。見た目は普通のビーフシチューだがスープは頑として香草の効いた東南アジア風の味わいだ。牛肉も柔らかくて美味しい。
今日はさらに南西の町ソクチャンまで行く。
今日のルートにもまた渡し船案件がある。船はマクバクという村から出るらしい。ホテルの親切なスタッフが船着場までの道を教えてくれる。自信満々の心持ちで出発。
チャーヴィンのさわやかな朝
クメール寺院も点在する。
市街を出てしばらくは国道に並行する裏道を走る。両側には緑の田んぼが広がりクルマはほとんど通らない。そのうえ追い風が吹いていて30km /h超で巡航できまことに爽快である。
ベトナムの道路で毎日お世話になる粁程標。座って休んだり、自撮り台に使えたりで便利だ。
船着場があるというマクバクの村に着いた。ここから川向こうのダインガイまで船で渡る。
しかし例によってどこから船に乗ればいいのかわからない。うろうろしていたら地元の兄ちゃんが声をかけてきた。見たところいかにも腹黒そうな風体で油断ならない感じだ。なにせ上半身裸だ。まともなやつは暑くても服ぐらい着るものだ。
しかし話しているうちにうっかりダインガイまで船で渡りたいと口を滑らせてしまった。すると腹黒くんは20万ドンで船を出すという。これまで乗った船の相場から言っても最高入札額だ。ヤフオク即決価格か。
こういう白タクならぬ白船はよくないと判断し、他に公的な船の便があるはずだからもっと真面目そうな人に訊いてみようと考えた。しかし見渡せばその辺の人はだいたい上半身裸であやしく見える。これは村人もグルである可能性を考え、来た道を少し戻ってガソリンスタンドの実直そうな店員に訊いてみる。
すると乗り場はやはりマクバクで、船着場もさっきいたあたりで合っていたようだ。ついでに料金を尋ねると店のおばちゃんが電話で訊いてくれた。5万ドンだという。ほらみろやはりさっきの野郎を怪しんだわたしの見識眼は正しかった。
確信を得たわたしはマクバクに戻り、ふたたび船着場を探した。
今度は悪いこと考えない真面目そうな人に訊こうと、写真屋のおじさんに尋ねてみる。ど根性ガエルの町田先生似だから信用できそうだ。聞けばやはり先ほどの場所のようだ。料金はと聞けば7000ドンという。ここでまた新説が出た。そして次の便は夕方の17時だと絶望的な情報までくれた。
真面目なだけあっておじさんは乗り場の地図と料金を紙に書いてくれ、わからなかったら写真屋から聞いたと言ってこの紙を見せればいいと自分の名前まで書いてくれた。いい人だ。奉職25年の元教師かもしれない。
さっきの船着場とおぼしき場所に戻る。するとさっきの悪そうなやつがまだいてほら見たことかという面持ちでニヤニヤしている。
コノヤローと思いつつさっきもらったメモを見せて、町田先生が7000ドンだって言ってたぞお前ボッてんじゃねえよ、でも船には乗りたいからいくらなら出すんだ、などと交渉しているうち人が集まってきた。どいつもこいつも上半身裸で油断ならない感じだ。
これは形成不利か、と思っていたところに「なんだどうした」と言って流暢な英語を話すデブが登場。こいつも上半身裸だがちゃんと英語が通じる相手が出てきて安堵する。
デブが説明してくれた料金システムは定期便だと確かに7000だが、10倍の7万払うと決まった時間以外のチャーター便が出るということだった。なるほどそういうことか。
「でもさっきこいつ20万とか言ってたぜ」とバラすと周囲のやつらが爆笑し「ボリすぎやろー」「何考えとんねん」とどついていた。漫才か。
結局夕方まで待つことなく7万で臨時便を出してもらうことに話がまとまる。デブが「金は向こうにつくまで払うな。もしなんかゴネたらそのまま戻ってきて俺を呼んでくれ。」と頼もしいことを言う。ていうか地元でぜんぜん信用されてないぞ船頭。
一件落着となり、20万野郎含め集まっていたやつら全員となぜか盛大に握手して晴れやかに解散する。デブに「いろいろどうもありがとう。あんた英語うまいね。」と言うと、「俺はベトナム系アメリカ人だ、向こうに住んでたこともあってね」と答えが帰ってきた。
いざ船出だ。しかしチャーター便だからわたし1人が乗るのかと思えば、どこからかわらわらと客が現れてズカズカ乗り込んでくる。その上乗ってきたやつがおーい臨時便が出るぞとか周りに呼びかけている。勝手に呼ぶな。スポンサーはわたしだぞ。
結局乗れるだけの老若男女、さらには脚を縛られたニワトリ数十羽まで持ち込まれた。これは全面的にわたしの奢りという形になる。なんという篤志家。
小さな舟は飛沫を蹴立てながら川の流れと直角に進んでいく。揺れもすごい。
同乗の地元民たちはわたしの手足に蚊に食われた痕がたくさんあるのと陽灼けしているのを見てウケている。みな口々にベトナム語で何か説諭してくれているようだったが身振りから推測するに、ここらじゃみんな虫除けローションと日焼け止めを塗るもんだ、おまえそんなことじゃダメだよもっとスキンケアに気を使えということのようだった。
むかし米兵を何十人も殺ったことがありそうなアクの強そうなおっさんが乗り合わせた若いお姉さんを「こいつお前のマダムにどうだゲヘヘ」とイジる。ベトナムおやじの定番トークがここでも出た。お姉さんは往年の岸本加代子似だったので前向きに検討してもよかったが、本人がすごくイヤそうな顔をしていたので遠慮しておいた。
航路は川の真ん中の中洲を縫う細い水路を通っていく部分もあり、ベンチェーのジャングルクルーズよりも流れは急だし揺れるし野趣に富んでいてはるかに面白かった。
約40分の乗船でダインガイに着いた。川を渡るだけで40分とはメコン川の大河ぶりに改めて恐れ入る。
わたしが全面的に料金を払い、タダ乗り御一行様とニワトリに続いて自転車を担いで上陸する。
ニワトリ積載システム
ダインガイの町
ダインガイからソクチャンまでは最短距離を国道が結んでいるがクルマも多そうなので、並行する運河沿いの道を走っていく。運河の両岸に集落が続き、生活臭に満ちているのがよい。
運河を渡ると農村風景からいきなりソクチャンの街に繋がっていた。
調和感のあったチャーヴィンの町から来ると、ごちゃごちゃしていて埃っぽくうるさい感じを受ける街だ。宿もなんだかパッとしたのがない。
とりあえず小腹が減っていたので屋台でフォーを頼む。
なんだかよくわからないで注文したら、まずトマトが入っていてイタリアンかと面食らったが、しかしそれ以上に不気味なのは、なんか脳みたいな形をした具がゴロンと乗っている。よく見たらやっぱり脳以外の何者でもない。おそらくは豚の脳だ。びっくりするから予告もなしにいきなり出すな脳を。ていうか随分小さいな豚の脳。
おそるおそるかじってみたところ、食感はあん肝ぽい感じと言えなくもない。味は… これが脳の味なんですねとしか言えない謎の味であった。もちろん完食は無理で数口食べて残した。
好きな人は脳増しコールとかするんだろうか
後で調べてみたところ、豚の脳と言うのは中華料理では割とポピュラーな食材のようで、ベトナムでも親しまれているのも不思議ではない。
日本でも中華食材を扱う通販で豚の冷凍脳を買うことはできるようなので興味ある方はどうぞ(冷凍脳と書くとSFぽいな)。
国産豚の脳みそ(セルベル) 凍結品【1パック:約100g】 | 豚,豚の脳みそ | 業務用食材の通販【川島食品株式会社 公式オンラインショップ】
そのあと夕食は他の店でローストポーク乗せご飯を食べた(画像なし)。
こちらは大変においしく、脳フォーの衝撃を和らげることができたのは幸いであった。
ソクチャンのホテル Công đoàn.
1200000VND(約400円)。
外見は立派だが部屋はこの旅随一のしょぼさだった。蚊帳が汗臭いし。洗え。
(2023年現在閉業)
これまでの客の蒸散した汗が染み付いた蚊帳